【実体験】経営革新計画の承認企業がメリットと申請時の注意点を解説

こんにちは、シェアリッチ株式会社 代表の阿久津です。

弊社は、2019年1月30日に茨城県から経営革新計画承認企業と認定されました。

申請書を提出したのが、昨年の12月14日ですから、約1か月半で無事に承認いただくことができました。

弊社は茨城県の古河市商工会に所属しているのですが、いつも大変お世話になっている担当の方に、「経営革新計画を申請してみませんか?」と昨年8月頃に提案頂いたのがきっかけでした。

その話を聞くまで、私は経営革新計画というものが何であるか、全く知りませんでした。

しかし、よくよく調べてみると、申請した経営革新計画を承認されると、経営的なメリットが数多くあることが分かりました。

その後すぐに申請書作成のサポートをお願いし、古河市商工会の担当者と、特定社会保険労務士かつ中小企業診断士の方にご協力いただき、10月から約2か月かけて経営革新計画の申請書を作りました。

お陰様で無事に承認企業に加わることができたのですが、私のように経営革新計画を申請したいと考えている会社やお店もきっとあるでしょう。

ですが、インターネットで検索しても、実際に経営革新計画を承認された企業が、リアルな体験を綴っている記事はほとんど見当たりません

そこで、今回は経営革新計画の承認取得のメリット、申請をしてみて私が実感した他のメリット、さらに申請書の書き方の注意点について、承認企業として実体験をもとにして、詳しく解説していきたいと思います。

経営革新計画とは?

経営革新計画は、すでに事業を行っている企業やお店が、既存の事業を活かしつつ、他にまだ存在していない新しい事業に取り組む計画を立てることを言います。

その計画をもとに、1年後、2年後、3年後と中期的な目標を達成していくことを目的とします。

ポイントは、既存の事業と新規事業を上手くリンクさせて、相互に業績を伸ばしていくこと。既存の事業の実績と経験を活用しながら、新しい分野を開拓していくというイメージでしょうか。

例えば、これまで写真館を営んできたお店が、写真を撮る技術を活かして、新たにブライダル事業を展開することを指します。

または、惣菜販売を営んできた会社が、高齢者や健康志向の人々をターゲットとして、無添加で健康に良い惣菜を開発することなども含まれます。

このように、既存の事業ノウハウを活かしつつ、新分野にチャレンジして事業の拡大を目指すことが経営革新計画の根本的な目的と言えるでしょう。

それでは、経営革新計画を申請して承認されると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

承認取得のメリットは?

経営革新計画の申請書を提出して承認されると、経営する上でメリットが数多くあります

それでは、どのようなメリットがあるか一緒に見ていきましょう。

こちらをご覧ください。

■メリット

  1. 政府系金融機関による低利融資制度
  2. 中小企業信用保険法の特例
  3. 補助金
  4. 海外展開事業者への支援制度
  5. 設備投資の減税
  6. 中小企業投資育成株式会社法の特例(投資の特例)
  7. ベンチャーファンドからの投資
  8. 特許関係料金減免制度

この中で、最も大きなメリットと考えられるのが1番目の政府系金融機関による低利融資制度 でしょう。

他にも、海外に商品を輸出している会社におすすめの支援制度、特許の申請を必要とする会社への支援制度など、会社やお店の事業内容によって、様々なメリットを受け取ることができます。

それでは、ひとつずづ見ていきましょう。

政府系金融機関による低利融資制度

承認企業の大きなメリットのひとつが、政府系金融機関(日本政策金融公庫と商工組合中央金庫)から優遇された金利で融資が受けられる点です。

これは、経営革新計画を実行していくために必要な資金を確保するための優遇措置です。

具体的には、基準金利よりも0.9%低減できます。

下記に、優遇措置の内容を載せていますので、参考にしてください。

日本政策金融公庫(国民事業部)

項目設備資金運転資金
貸付限度額7,200万円4,800万円
貸付期間20年以内
(うち据置期間2年以内)
7年以内
(うち据置期間2年以内)

日本政策金融公庫(中小企業事業部)

項目設備資金運転資金
貸付限度額直接貸付 7億2千万円
代理貸付 1億2千万円
2億5千万円
貸付期間20年以内
(うち据置期間2年以内)
7年以内
(うち据置期間2年以内)

詳しくは、日本政策金融公庫のこちらのページをご覧ください。

商工組合中央金庫

項目設備資金運転資金
貸付限度額7億2千万円
2億5千万円
貸付期間20年以内
(うち据置期間2年以内)
7年以内
(うち据置期間2年以内)

ただし、経営革新計画に申請した金額以上を借りることはできませんので、注意してください。

また、他の民間の金融機関から融資を受ける際も、経営革新計画承認企業というのは好材料となり、良いアピールができるようです。

確かに、承認企業というのは、国や県からお墨付きをいただいたということですから、一般的な経営計画書よりも信頼できるということでしょう。

中小企業信用保険法の特例

信用保証協会の債務保証の限度額が広くなります

通常の保証枠に加え、同額の別枠が認められます。

下記をご覧ください。

項目通常枠別枠
普通保証2億円2億円
(組合は4億円以内)
無担保保証8,000万円
8,000万円
無担保無保証人保証2,000万円2,000万円

これらはあくまで限度額であり、実際は審査により貸出の枠は決まります。

また、他で別枠を利用していると、利用できる枠は減額されますので注意してください。

補助金

経営革新計画承認企業のために設置された様々な補助事業に申請できます

補助金の申請をして受かれば、経営革新計画で承認を受けた新製品、または新技術に関する研究開発を行う時の、研究開発経費の一部を補助してもらえます。

また、市場開拓助成として、ビジネスフェア等の展示会に出展した時の会場設備費、搬入・搬出費や、市場調査にかかる費用を補助してもらえることもあります。

他には、一部の補助事業に関して、経営革新計画に基づく事業計画が加点対象となるケースもあるようです。

承認された企業のある都道府県、または市町村で、独自の補助事業があります。

詳しく知りたい方は、直接問い合わせてみてください。

都道府県名内容
北海道経営革新で元気企業!!
青森県経営革新計画支援事業のご案内
秋田県経営革新計画承認企業優遇措置
岩手県経営革新計画承認後の支援策・優遇措置
宮城県中小企業経営革新支援事業
山形県中小企業経営革新事業について
福島県中小企業経営革新計画支援事業の主な支援策
群馬県経営革新計画承認事業者への支援策の紹介
栃木県「経営革新計画」活用の手引き
茨城県経営革新計画 優遇措置
千葉県経営革新計画の承認に基づく支援策
埼玉県経営革新計画促進融資
東京都経営革新計画申請について
神奈川県経営革新計画 支援措置
新潟県経営革新計画 支援について
富山県中小企業経営革新支援事業
長野県【経営革新】のご案内
山梨県経営革新計画支援制度について
静岡県経営革新補助金の応募手続き
愛知県あなたの「夢」を応援します!経営革新計画
岐阜県経営革新計画の実行
石川県経営革新計画 支援制度
福井県経営革新計画について
滋賀県経営革新計画 支援措置
三重県経営革新計画 支援措置
奈良県経営革新計画 支援措置
京都府経営革新計画 各種支援施策
大阪府経営革新計画 支援策
兵庫県経営革新計画 主な支援策
和歌山県承認企業のメリット
岡山県経営革新計画 主な支援策
鳥取県経営革新計画 支援制度
広島県経営革新計画 支援策
島根県経営革新計画 支援施策の内容
山口県経営革新計画 主な支援策
香川県経営革新計画 各種支援策
徳島県
経営革新計画 主な支援策
愛媛県経営革新計画 支援内容
高知県経営革新計画 支援策
福岡県経営革新計画 支援策について
大分県経営革新計画 主な支援策
佐賀県経営革新計画 各種支援施策
長崎県経営革新計画 主な支援制度
熊本県経営革新計画 優遇措置
宮崎県経営革新計画 支援措置について
鹿児島県経営革新計画 支援の内容
沖縄県経営革新計画 支援制度

海外展開事業者への支援制度

海外で新規の事業を行おうと考えている、海外展開事業者への支援制度も充実しています。

特に、次の3つが有名です。

  1. スタンドバイ・クレジット制度
  2. 貿易保険法の特例概要
  3. 中小企業信用保険法の特例概要

これらは、海外へ新規開拓のための資金の融資を受ける時に、企業にとって有利な制度になります。

順番に見ていきましょう。

スタンドバイ・クレジット制度

スタンドバイ・クレジット制度は、日本政策金融公庫の融資サービスのひとつ。

海外の現地流通通貨で、長期の資金調達を望む企業にとってメリットのある制度です。

日本政策金融公庫の提携する海外の金融機関に対して、「スタンドバイ・クレジット制度」の活用で信用状が発行されると、債務の保証と同様の役割を果してくれます。

貿易保険法の特例概要

貿易保険法の特例概要は、海外で新規事業を行う事業者が、海外の金融機関から1年未満の短期借入をするときに、独立行政法人である日本貿易保険(NEXI)が、海外事業資金貸付保険を付けることで、信用度が増して借り入れをしやすくするというもの。

日本貿易保険は、政府が100%出資する公的輸出信用機関ですから、企業には心強いですね。

中小企業信用保険法の特例概要

中小企業信用保険法の特例概要は、企業が国内の金融機関から事業資金の融資を受ける時に、信用保証協会が債務の保証を行ってくれる制度です。

経営革新計画を承認された企業は、保証限度額が増額されます。以上3つが、海外展開事業者への支援制度になります。

詳しくは、海外展開に伴う資金調達支援を参考にしてください。

設備投資の減税

承認されると、設備投資の減税(中小企業等基盤強化税制)を受けることができます。

これは、機械・装置などを取得した場合に、税額控除、または特別償却を受けることができる制度です。

対象となるのは、 経営革新計画のために取得または製作した、1台もしくは1基の取得価格が280万円以上の機械・装置 (リース取引は、税額控除のみ適用) になります。

取得価格の7%の税額控除、または取得価格の30%の特別償却を利用することができます。

例を使って説明しましょう。

税額控除

税額控除は、法人税額から直接税額を控除することができる制度。

例えば、300万円の機械を購入した場合、その7%である21万円を 法人税額から控除できます。

特別償却

特別償却とは、通常の減価償却費とは別枠で、取得した事業年度に 「取得価額×30%」を特別に償却することができる制度。

取得した機械や装置を早めに償却したい事業者におすすめです。

以上の2つを受けることができるようです。

これら2つの設備投資の減税を行うために、確定申告書に必要事項を記入し、税務署に申告してください。

中小企業投資育成株式会社法の特例(投資の特例)

中小企業投資育成株式会社からの投資は、通常資本金3億円以下の株式会社が対象です。

しかし、経営革新計画の承認企業は、中小企業投資育成株式会社法の特例を受けることができ、資本金が3億円を超える事業者も対象になります

また、経営革新計画で新たに会社を設立した場合の資本金が3億円を超える株式会社も、特例の対象になるようです。

ベンチャーファンドからの投資

経営革新計画の承認企業は、資金調達や経営支援などベンチャーファンドからの投資の条件が緩和されます。ベンチャーファンドからの投資というのは、民間のベンチャーキャピタルが運営するファンド(投資事業有限責任組合)へ中小企業基盤整備機構が出資を行った後で、ベンチャーファンドが企業に投資することを言います。

ベンチャーファンドからの投資を受ける条件として、通常は主に設立5年未満の創業又は成長初期の段階にある中小・ベンチャー企業が対象です。

しかし、経営革新計画の承認企業は、設立年次に関わらず対象となります

経営革新計画に従って事業を行い、株式公開を目指す未公開株式会社が条件です。

ただし、この制度を利用する場合には、経営革新計画の承認とは別途で審査が必要ですので、注意してください。

特許関係料金減免制度

経営革新計画に従って研究開発を行った場合、審査請求料や特許料(1~10年分)などの特許関係料金が半額に減額されます。

経営革新計画が開始されてから計画が終了後2年以内の出願が対象となります。すでに支出している分に関しては、対象となりませんので気を付けてください。

商品や製品の新技術の開発を行っている企業には、嬉しい制度ですね。

詳しくは、特許庁のこちらのページをご覧ください。

以上が、経営革新計画の承認企業が受けられるメリットでした。企業によって必要とするメリットは異なるとも思いますが、参考にしてみてください。

続いては、私が経営革新計画を申請した時に感じた、リアルなメリットをお伝えしたいと思います。

【実体験】私が実感した他のメリット

私が経営革新計画を申請したのには、上記のようなメリットの他に、もう一つ大きなメリットを実感しました。

それは、会社の新規事業の将来性を客観的に分析できたという点です。

経営革新計画は、今まで行ってきた事業を活かしながら、他の企業がまだ行っていない新しい取り組みをすることでした。

つまり、革新的なことにチャレンジするということ。開拓者のように、誰も歩んでいない道を自分で切り開いていくわけですから、何が起こるかは未知の世界です。

計画に対する考え方、世間の波を感じる読みが甘いと、失敗する可能性は当然あります。

会社を経営していると分かると思いますが、現状維持というのはあり得ません

現状維持のように見えても、何かしら新しいチャレンジをしているのが、生き残っていく企業です。

ただ、チャレンジには当然ですが失敗もつきものですよね?

大企業ならば資本に余裕があるので、少々の失敗は全く問題ないでしょう。

しかし、中小企業、特に少人数の零細企業は、チャレンジした後の失敗に対してもっとシビアです。

無謀なチャレンジをすると、倒産する可能性だってありますからね。

だからこそ、会社の人間以外の外部の専門家のアドバイスを受けて、チャレンジの質を高めることが大切になってきます。

第三者のアドバイス、特に多くの企業を見てきた商工会の職員、または中小企業診断士のアドバイスというのは、鋭い視点で新規事業のチャレンジを分析し、私たち企業に将来的なビジョンと成功する可能性をイメージさせてくれます。

実際に、私が経営革新計画を考えた時も、専門家に新規事業への可能性を褒めていただきながらも、具体性の無さや見通しの甘さなどを痛感させられました。

その後、アドバイスを受けた点を見直し、より綿密な計画を立て、成功する可能性を高めたチャレンジを県に提示することができました。

その結果として、無事に茨城県から経営革新計画の承認企業として認定されました。

仮に、承認を受けられなかったとしても、専門家に客観的に新規事業を見てもらい、アドバイスを受けることは、私たち企業にとって、大きな財産となるはずです。

ですから、もし経営革新計画の申請書を出して、承認を得られなくても、経営革新計画を申請するというチャレンジに対しては大きなメリットがあります。

そして、来年以降にもう一度計画を練り直して、再度トライしていただきたいと思います。

最後に、私が実際に経営革新計画を申請した時の、申請書の書き方の注意点をお伝えしたいと思います。

経営革新計画申請書の書き方の注意点

経営革新計画の承認を受けるためには、経営革新計画の申請書の書き方で注意すべきポイントがあります。

それを、実際に私が商工会の職員と社労士兼中小企業診断士の方と共に申請書を書いた時のことを思い出しながら、こちらに書いていきたいと思います。

■ポイント

  1. 既存事業と新規事業の関係性
  2. 簡潔で分かりやすい文章

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

既存事業と新規事業の関係性

経営革新計画は、社会に革新をもたらす計画であることが前提です。

しかし、それはすでに行っている既存事業を活かしながら、新規事業を展開するというのが必須。

ですから、既存事業と新規事業の関係性を明らかにして、計画に絡めて考えなければなりません

例えば、魚屋さんを営んでいるお店が、将来性があるからといって、業種と関係のない電化製品の開発をしたいと経営革新計画で申請しても、承認されないということです。

ですから、今まで行ってきた事業とは全く異なる、あまり突拍子もない計画を立ててはいけません。

まぁ、私のように商工会や中小企業診断士などの専門家と一緒に作成すれば、計画の時点で見直しを求められるので、大丈夫かと思いますが。

しかし、専門家のアドバイスを受けずに申請する場合は、その点を特に意識して作成されることをおすすめします。そして、私が最も苦労したのが、既存事業と新規事業の相違点を書く欄です。

既存事業の説明から、どのような経緯で新規事業を考えたかというのを、説明するのが難しかったですね。

私の会社の場合は、物販で集客に苦労したところから、ネット集客の仕組みを学んで、その方法を他の集客に苦しむ会社やお店に提供するという部分でした。

この辺を自分で書くことに自信のない方は、私のように地元の商工会や中小企業診断士に相談して、一緒に作成することをおすすめします。

簡潔で分かりやすい文章

経営革新計画の申請書には、簡潔で分かりやすい文章を書くことを心掛けましょう。

過去に承認された企業の申請書を見ると分かりますが、申請書は箇条書きで簡潔に書かれています。

そして、読み手が読みやすいように、自然に読める流れを意識した文章も必要になってきます。自分で書いた後に、第三者に読んでもらうと良いでしょう。

私は商工会の職員や中小企業診断士に確認して、何度も修正しました。

それと、誤字脱字にも気を付けてください。

以上が、経営革新計画の申請書の書き方の注意点です。

詳しくは、申請書記入の手引きを参考にしてみてください。

まとめ

経営革新計画を申請して承認企業となった私が、経営革新計画を承認された場合のメリット、実際に申請して私が実感したメリット、そして申請書の書き方の注意点について、詳しく紹介してきました。

経営革新計画のメリットを書いた記事はいくつかありますが、実際に経営革新計画を承認された企業が書いたサイトが見当たらなかったので、私が実体験として感じたことを書かせていただきました。

はじめは、経営革新計画がどういうものか、そしてどのようなメリットがあるか、私も分かりませんでした。

しかし、詳しく調べてみると、多くのメリットが存在し、その他にも、新規事業を専門家に客観的に見てアドバイスをもらえるという嬉しい誤算?もあり、私は経営革新計画をして本当に良かったと思います。

もちろん、計画を立てただけでは意味がありませんので、今回承認された計画をもとに、1年、3年、5年のスパンでしっかりと新規事業にも取り組んでいきたいと思います。

経営革新計画の申請を考えている会社やお店の方に、今回の記事が参考になれば嬉しいです。

この記事を書いた人

シェアリッチ株式会社